​1984(昭和59)年刊 『現代和風建築集』第4巻より転載

<常安軒>

​山口文象(1902−1978)は昭和初年のドイツに学び、帰国後、日本歯科医学専門学校附属病院などのいわゆる「白い」建築に名を残した人だが、これは彼の数少ないオーソドックスな作風による作品である。

建築主は新聞社の論説委員として活躍していた人で、その茶席をということで、この建築が生まれた。八畳と四畳の二室が雁行し、そのずれを利用して一つ屋根の下に待合が作り出されている。山口はとくに考えずに感覚的に造ったと後に述べているが、やはり彼の近代建築家としての眼が生かされて、とくに八畳の間は伝統的なディティールを用いながら、一あじ違った空間が造り出されている。なお今回は収録されていないが、この建物のすぐ傍らに、高台寺遺芳庵写しの一畳台目の席が、同じく山口がかかわって建てられている。

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